こどもの手当 熱傷(やけど)

家の中にはやけどを起こす原因がたくさんあります。やけどをした部分が「広い」ほど、「深い」ほど危険です。こどもは体の表面積の10~15%以上の広さをやけどすると重症です。
手当
・ 急いで冷たい水、水道水を注いで痛みが取れるまで冷やします。
・ 衣類を脱がさないで、そのまま衣類の上から冷水をかけます。
・ 水ぶくれはつぶさないで、消毒した布か洗濯した布で覆い、その上から冷やします。
※ 熱傷範囲が広い場合、広範囲を冷やし続けることは、体温をひどく下げる危険があるので、低体温に注意します。
※ 軟膏、油、消毒薬などはぬりません。(ぬると、感染を起こしたり、医師の診療の妨げになります。)
※ 広範囲の熱傷や顔・手など熱傷の部位によっては特殊な治療が必要となり、そのような場合は119番通報し、専門の医療が可能な医療機関へ搬送する必要があります。

こどもの手当 痙攣(ひきつけ)

こどもは、脳をはじめとする神経系の発達が未熟であるため、けいれんを起こしやすく、特に熱性けいれんが多く見られます。てんかんもこどもに起こりやすく、この他嘔吐や下痢などに伴う脱水、髄膜炎や脳炎、強い興奮、テレビの光刺激などによって起こる場合があります。
観察のポイント
・どのようなけいれんか。
   からだが弓なりになり、手足を突っ張る。
   手足を伸ばしたり縮めたりして、がたがた震わせる。
   頭をこっくりするようなしぐさをする。  etc
・どのくらいの時間続いたか。
・たびたび起こったか。
・どのような状況で起こったか。
手当
・衣服をゆるめ、楽に呼吸ができるようにします。
・けいれんを起こしている間は、強く揺さぶったり、無理に押さえつけたりしません。
・けいれんを起こしている間は、ベッドからの転落を防いだり、周りの玩具を遠ざけるなど、こどもの安全を確保します。
・吐くときは、吐いたものが気管に入らないように、からだを横に向け、気道を確保します。
・けいれんが短時間で治まり、機嫌がよく、意識がしっかりしていれば、静かに休ませ、様子をみて受診します。
・次のような場合には、119番通報し救急車で直ちに医療機関に搬送します。   けいれんが長時間続く。
   けいれんが繰り返す。
   けいれんが治まっても意識が戻らない。 etc
※けいれんの発作中、歯の間に割り箸やタオルなどを入れると、舌や口内をきずつけたり、舌を奥に押し込み、呼吸困難を起こすことがあるので、してはいけません。

こどもの手当 誤飲事故

飲んだものの種類により、手当の方法が違うので、いずれの場合も、119番、医療機関あるいは中毒110番などに連絡し、指示を受けることが基本となります。意識がないときや、呼吸が苦しそうなときは、一次救命処置の手順により手当を行い、救急車で直ちに医療機関へ搬送します。

たばこ
こどもの誤飲事故の中で一番多い。症状は、吐き気、嘔吐から始まり、顔色が蒼白になったり、呼吸・脈が速くなることがあります。大量に吸収された場合には、意識障害やけいれんが起こり、呼吸が停止する可能性もあります。
手当
・大急ぎで口の中に残っているたばこをぬぐいとります。たばこの葉や吸いがらを飲んだ場合には、水や牛乳などを飲ませてはいけません。
・水に浸っていたたばこを食べたり、その液を飲んだ場合には、からだを保温し、急いで医療機関へ連れていきます。

家庭用医薬品
風邪薬、睡眠薬、ビタミン剤など最近の薬は甘くておいしいので、たくさん食べるという事故が多くなっています。
手当
・口の中を調べ、薬が残っていたら指を口の中に入れてぬぐいとります。
・水や牛乳を飲ませ、吐かせます。
・薬の空きびん、散らばっている薬、吐いたものは医師に見せます。

石けん
浴用、化粧用、薬用、洗濯用などいろいろありますが、毒性は低いといわれています。
手当
・一口程度なら、水や牛乳を飲ませ、しばらく様子を見ます。吐き気、嘔吐、のどの痛み、口の中のただれなどの症状があれば、医療機関へ連れていきます。
・大量に食べた場合はできれば吐かせて、医療機関へ連れていきます。

マニキュア液・マニキュア除光液
身近な化粧品の中では最も毒性が高く、少量でも飲んだり、誤って気管に入れると危険です。また揮発性のものを吸入しても中毒を起こすことがあります。
手当
・吐かせてはいけません。
・少量(マニキュア液3ml、除光液1ml)でも飲んだ場合はすぐに医療機関へ連れていきます。
・揮発性のものを吸入した場合は、新鮮な空気を吸わせて様子をみます。

クリーム
化粧品の中では最もこどもの誤飲事故が多いものです。通常こどもが誤って食べるくらいの量ではほとんど問題はありませんが、食べた量が多いときは、油分成分による症状(吐き気、嘔吐、下痢など)がでることがあります。
手当
・水分をとらせて様子をみます。
・大量に食べた場合や、症状がみられる場合は医療機関へ連れていきます。

ボタン型電池
飲み込んだ電池は食道に詰まらなければ、ほとんどの場合便にでます。しかし一ヵ所に長時間とどまると、放電により組織腐食をきたします。また電池が消化管内で壊れると、もれ出したアルカリによって潰瘍などの危険もあります。
手当
・電池の種類を確かめます。
・飲んだり鼻や耳に入れた場合、急いで医療機関へ連れていきます。受診時に電池の種類を伝え、同じ種類の電池があれば持参します。
・飲んだことが確かでなくても、確認のため医療機関へ連れていきます。

ナフタリン・しょうのう
防虫剤は成分によって毒性や症状が全く異なるので、外袋などで確認をします。ナフタリンやしょうのうは高い毒性を持ちます。
手当
・なめただけなら、水を飲ませ(牛乳はだめ)様子をみます。
・かけら程度でも食べている場合は急いで医療機関へ連れていきます。
※防虫剤、石油製品(灯油、ガソリン、シンナー、ベンジンなど)の場合は牛乳を飲ませてはいけません。
理由:牛乳を飲むと毒物のからだへの吸収量が多くなります。

応急手当(その他) 熱中症

高温や高湿の環境下で起こる全身の熱障害を熱中症といい、症状により熱痙攣、熱疲労、体温調節機能障害を伴う熱射病に分けられます。

熱痙攣
 
高温の環境下で作業や運動をした時などに起こる、痛みを伴った筋肉の痙攣であり、吐き気や腹痛を伴います。大量の発汗があるのに水分を補給しなかったり、塩分を含まない水分のみを補給したときに起こり、体温の上昇があってもわずかです。

熱疲労
 
高温の環境下で、ことに蒸し暑いところで、疲労感、頭痛、めまい、吐き気などの症状が認められます。大量の発汗による脱水症状であり、汗の蒸発による熱放散が不足するために体温は上昇します。

熱射病
 
高温の環境下で体温調節機能が破綻した状態をいいます。異常な体温の上昇と興奮、錯乱、痙攣、昏睡などの意識障害が特徴である。発汗の停止によって皮膚は乾燥し、手当が遅れればショックや細胞・臓器障害に陥り、死亡することもあるので危険です。

手当
・風通しが良い日陰や冷房の効いた所に運び、衣類をゆるめて楽にします。
・本人が楽な体位にしますが、顔面が蒼白で脈が弱いときには、足を高くした体位にします。
・意識があり、吐き気や嘔吐などがなければ、水分補給をさせます。スポーツ飲料(塩分が含まれている)か、薄い食塩水などを飲ませます。
・皮膚の温度が高いときには、水で全身の皮膚をぬらし、あおいで風を送り体温を下げます。
・皮膚が冷たかったり、震えがあるときには、乾いたタオルなどで皮膚をマッサージします。
・このような手当をしても、熱痙攣や熱疲労の症状がおさまらないときは、できるだけ早く医師の診療を受けさせます。
・熱射病の症状があるときは、急いで医療機関に搬送します。
・意識がないときは、一次救命処置の手順により手当を行います。

応急手当(その他) 中毒

ガス中毒
 
自動車の排気ガス、天然ガス、液化石油ガス(プロパンガスなど)、一酸化炭素、亜硫酸ガス、塩素、シンナー、石油化学製品のほか、新建材その他が燃焼して発生する有毒ガスなどの吸入によって起こります。
症状
・気分が悪くなり、あくびが出て、頭痛、めまい、吐き気を起こす。
・手足がしびれて動けなくなる。
・重症になると、意識が障害され呼吸が停止し、死に至ることもある。
・すぐに意識が戻り、症状が見られなくなっても、数日あるいは数週間後に、記憶障害など神経症状があらわれることがある。
手当
・直ちに119番通報します。(意識がはっきりしていて症状がおさまっても、できるだけ早く医師の診療を受けさせます。)
・新鮮な空気のところに傷病者を運び出し、衣類を緩めます。
※意識があっても、歩かせてはいけません。
※体を起こしたり、ゆすったりすると、吐くことが多いので、静かに運びます。
・保温します。
・意識がなければ、一次救命処置の手順により手当を行います。

薬物中毒
 
いずれも、食べたり、飲んだり、皮膚から吸収されたり、肺に吸い込んだり、注射によって中毒を起こします。医薬品で中毒を起こし、手当が必要になる例の主なものは、鎮静睡眠薬(精神安定薬を含む)などです。化学薬品には、化粧品、洗剤、塗料や接着剤からの揮発性物質などがあります。
症状
・健康であった人に急に様々な症状が現れる。(頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、呼吸困難、血圧低下、意識レベルの低下、痙攣など)
・唇や口の回りのただれや、吐く息のにおいの異常など
手当
・119番、医療機関あるいは日本中毒情報センターに電話して、指示を受けます。
・傷病者が飲んだ薬品の容器に中毒に対する注意書があったら、その指示に従います。
・医療機関に搬送するときは、薬品の容器や傷病者の吐いたものを忘れずに持って行きます。
大阪中毒110番:072-727-2499(毎日24時間、年中無休)
つくば中毒110番:029-852-9999(毎日9~21時、年中無休)
たばこ専用電話:072-726-9922(毎日24時間、年中無休、テープによる情報提供)
(財)日本中毒情報センターHP http://www.j-poison-ic.or.jp

食中毒
 
調理してから食べるまでに時間がたった食物や、生の食品が細菌で汚染されると、増殖した細菌そのもの、または細菌の出す毒素が中毒の原因となります。これを食中毒といいます。
症状
・腹痛、嘔吐、下痢で始まり熱が出る。
・ボツリヌス菌中毒では、眼球、喉、食道の筋肉麻痺などの神経系の症状として、物が2つに見えたり、飲み込むことや、呼吸ができなくなったりします。
手当
・嘔吐・下痢がある場合は脱水を防止するため、嘔吐を誘発しないように水分を少量ずつ頻回に与えます。
・吐いた物が気管に入らないような体位(回復体位)をとらせます。
・できるだけ早く医師の診療を受けさせます。
※吐いた物や便などは医師に見せます。

応急手当(その他) 脳虚血

脳に行く血液の流れが一時的に少なくなり、気が遠くなるか気を失うことを脳虚血といいます。普段から比較的血圧の低い人が、気温の高い所で長時間立っていたり、湯ぶねから急に立ち上がったり、神経質な人がひどく驚いたり、恐れたり、精神感動によって起こることがあります。そのほか、急に多量の血液や水分を失ったときにも起こります。
症状
・顔が蒼白になる。
・冷や汗をかく。
・皮膚が冷たくなる。
・脈が弱くなる。普通、遅いことが多い。
・めまいや気が遠くなることを訴える。
・手足の感覚がなくなるような訴えがある。
手当
・水平か、または足の方を高くして寝かせます。
・気道を確保できる体位を保ちます。
・衣類や、体をしめつけているものを緩めます。
・保温をします。
・倒れたときに、けがをしていないか調べます。
・回復が遅いときには、別の病気がないか医師の診療を受けさせます。

応急手当(その他) > じんましん

じんましんは、食事、飲酒、薬、寒冷、温熱、日光その他の光線、運動、精神的影響、慢性の病気などが原因となります。
症状
原因がどれであっても、発疹はだいたい同じで、皮膚が膨らみ、かゆみが強い。普通、一時的なもので2~3時間から24時間くらいで消える。
手当
・かゆみを止めるためには、冷やすのが一番よい方法です。治療は原因を取り除くこと以外にありませんが、くり返し出る場合には、医師の診療を受けさせます。
・寒冷じんましんは、冷水や冷気によって起こるものですから、毛布などで全身を包むか、ぬるめの風呂に入って徐々に湯温を上げながら体を温めたりします。水泳中であれば、直ちに水から上がり保温して安静にします。

応急手当(その他) 痙攣

痙攣は、全身にみられる場合と、体の一部にみられる場合とがあります。頭のけが、脳卒中、てんかん、中毒、熱中症や、こどもでは発熱などによって起こることが多く、まれに重い病気が原因のときもあります。
症状(てんかん発作)
・突然意識がなくなり、全身がまずかたくつっぱり、次いで全身ががたがたと律動的に痙攣する。
・呼吸困難となり、顔色は青く、チアノーゼがみられることが多い。
・歯をくいしばったり、白目をむくことがある。
・尿や便を失禁する場合もある。
・ときには吐いたり、口から泡を出したりもする。
・痙攣が長引くと呼吸ができにくいので危険であるが、大体1~2分間、長くても5分以内でおさまるのが普通である。
手当
・衣服のボタンをはずし、楽に呼吸ができるようにします。
・分泌物や嘔吐物で窒息の恐れがあるときには、回復体位もしくは顔を横に向けて気道を確保します。
・発作時には倒れて体を強く打つことが多いので、全身、特に頭を打っていないかよく調べます。
・保温します。
・痙攣の発作中、奥歯の間に割り箸、手拭などを入れることは避けます。舌や口内をきずつけたり、舌を喉に押し込んだり、呼吸困難を起こすことがあります。
・名前を呼んだり、ゆり動かして刺激を加えたり、無理に押さえつけたりしません。
・急いで医療機関に搬送します。
※痙攣の原因の診断には、正確な情報が唯一の手がかりとなるので、以下のことを要領よくまとめて医師に報告します。 
・どんな痙攣が 
・いつ(どんなときに) 
・どんなところで 
・どうして(どのようなことがあった後で) 
・どんなふうに起こった 
・どのくらい続いたか(持続時間)

応急手当(その他) 腹痛

腹痛を訴える病気の中で注意したいのは、急性腹症で、早急に手術しないと生命に危険の及ぶものが多いので、特に重視しなければなりません。主なものは、胃、十二指腸の潰瘍や穿孔、腸閉塞、急性虫垂炎、急性胆のう炎、腹部のけがなどです。また、女性の場合には、卵巣などの突然の病気で激しい腹痛や出血が起こることがあります。
症状
・ 激しい腹痛を訴える。
顔色は蒼白で、額に冷や汗をうかべ、脈は弱く速い。
・ 意識が障害されることがある。
・ 一般に腹部は張ったように固く、嘔吐などを伴う。
手当
・ベルトなどを緩め、本人の最も楽な体位に寝かせます。
・ 横向きで体を丸めた体位か、上向きで膝を曲げた体位をとらせます。
・ 腹を温めたり、冷やしたり、下剤を与えてはいけません。
・ 飲食物を与えてはいけません。
・ 急いで医療機関に搬送します。
・ 吐いたものは医師に見せます。
・ 腹痛の部位(どの部分か)、程度(どのような)、時間(続けて、ときどきなど)を医師に報告します。

応急手当(その他) 脳卒中

脳の中またはその近くの血管が突然破れたり、血管の中に血のかたまりなどができて脳の血液循環が悪くなると、急激に意識障害や運動障害などを起こします。このような病気を脳卒中といいます。
症状
・突然のしびれや脱力(体の半身の手足が動きにくくなったり、しびれたり、手足の力が弱くなったりする)。
・突然の混乱、会話不能(うまく口がきけなくなったり、言葉を理解できなくなることがある)。
・突然の歩行困難、めまい、平衡失調(歩く足がもつれたり、立っていられなくなったりする)。
・突然の激しい頭痛(クモ膜下出血では、激しい頭痛や後頭部をバットで殴られたような激痛とともに、嘔吐を伴うことがある)。
・急激に意識障害を起こし、意識がもうろうとしたり意識不明になったりする。
・呼吸が不規則になったり、重症では呼吸が停止する。
・顔色は赤くなる場合もあり、青くなる場合もある。
・脈は強く、ゆっくりと打つ。
・瞳孔の大きさが左右で異なる場合がある。
・眼球の動きが異常になり、両眼が一方に寄ったり、片側が外を向いたりする。
注意事項
・ろれつがまわらない場合は、酔っ払いと区別しなくてはならない。ただしアルコールを飲んでいて、脳卒中を起こす場合もある。酔っ払っているからといって脳卒中ではないと早まった判断をしてはならない。
手当
・直ちに119番通報します。
・急激に意識障害を起こし倒れて体を強く打つことが多いので、全身、特に頭を打っていないかよく調べます。
・心身ともに安静にします。
・ネクタイ、ベルトなどを緩め、楽に呼吸ができるようにします。
・水平に寝かせ、毛布などで保温をします。顔が紅潮しているときには、上半身をやや高くします。
・嘔吐があるときには、吐いたものが誤って気管に吸い込まれないように、回復体位をとらせます。
・意識障害があるときは、一次救命処置の手順により手当を行います。
注意事項
・嘔吐があるときには、吐いたものが誤って気管に吸い込まれないように、回復体位をとらせる。
・倒れた場所がトイレや浴室または戸外などの場合には、数人の手を借りて、近くで安静を保てる場所に静かに移します。その際、頭部と胴体を水平に保ち、特に頭が動揺しないように注意します。

応急手当(その他) 心臓発作

心臓発作とは、冠動脈(心臓の筋肉を養う血管)に突然異常が起こり、狭心症や心筋梗塞が起きたり、ひどい不整脈が続いたりする異常で、いずれも生命に重大な危険が及びます。狭心症とは、冠動脈の血液の流れが悪くなったときに起こり、胸をしめつけるような痛みを生じます。心筋梗塞とは、冠動脈の一部の血液の流れが止まり、その部分の心筋に栄養や酸素が不足し心筋細胞が死んでいく(壊死)ことをいい、狭心症よりも痛みが強く長く続きます。狭心症や心筋梗塞などの心臓病は、我が国の死因の高順位を占める病気です。心臓発作は、短時間で状態が悪化し致命的になる危険性がありますので、一刻も早く専門医のいる医療機関で診療を受けさせます。
症状
・痛みが、胸または胃の上の方から始まり、ときには頸の左側、左肩、左腕にかけて広がる。
・顔色が蒼白になり、唇、皮膚、爪の色も青黒くなり(チアノーゼ)、冷や汗をかく。
・胸を押さえてうずくまるか、ばたっと倒れる。
・あえいだり呼吸困難になる。
・強い痛みにより死に対する恐怖感を覚える。
手当
・直ちに119番通報します。
・意識があるときには、座った姿勢をとらせて深呼吸をさせます。
・傷病者が医師から服用を指示された薬を持ち、それを自分で服用できないときは介助します。
※ニトログリセリン錠の効果がない場合は、心筋梗塞が疑われます。
・原則として飲食物は与えません。
・全身を保温し観察を続けます。
・意識を失ったら、一次救命処置の手順により手当を行います。

応急手当(外傷) 包帯

包帯

保護ガーゼ(きずの覆い)
包帯をする前に、きずには、適当な大きさと厚みのある保護ガーゼを当てます。保護ガーゼは、圧迫による出血防止(止血)、血液や分泌物の吸収、きずの清潔保持(感染防止)、きずの安静による苦痛の軽減に効果があります。
包帯
包帯は、きずに当てた保護ガーゼの支持固定、副子の固定、手や腕を吊るために用います。また、強く巻くことにより出血を止めることもできます。巻軸帯、弾性包帯、救急絆創膏、三角巾、ネット包帯など、いろいろ市販されていますが、目的にかなったものであれば何を用いてもかまいません。例えば、顔面、頭部、あるいは曲げ伸ばしする関節部に保護ガーゼを固定するには、弾性包帯のほか、ストッキングを切ったものなども便利です。
三角巾
三角巾は、きずの大きさに応じて使用でき、広範囲のきずや関節を包帯したり、手や腕を吊るのに適しています。三角巾の使用法を知っていると、ふろしき、スカーフ、シーツなどを応用することができます。

三角巾の使用例
1. 耳(頬またはあご)
三角巾を適当な幅にたたみ、中央部を患部の保護ガーゼの上に当て、一方の端はあごの方へ、他方の端は頭頂部へもっていきます。反対側の耳のやや上で交差させ、一方の端を額の方へ、他方の端を後頭部へ回し患部を避けて結びます。
2.
三角巾を膝を十分に覆うくらいの幅にたたみ、患部に当てた保護ガーゼの上を覆い、膝の後ろに回して交差させます。一方の端で当てた三角巾の膝の下方を回して押さえ、他方の端で当てた三角巾の上方を回して押さえ、膝の上方外側で結びます。
3. 腕の吊り方
吊ろうとする腕の肘側に頂点を置き、健側の肩に底辺の一端をかけ、もう一方の端を、患側の肩に向かって折り上げ、他方の端と結びます。頂点を止め結びにするか、折り曲げて安全ピンで止めます。

応急手当(外傷) 多量の出血

多量の出血-止血法-
人間の全血液量は、体重1kg当たり約80mlで、一時にその1/3以上失うと生命に危険があります。きずからの大出血は直ちに止血をしなければなりません。

直接圧迫止血
出血しているきず口をガーゼやハンカチなどで直接強く押さえて、しばらく圧迫します。この方法が最も基本的で確実な方法です。包帯を少しきつめに巻くことによっても、同様に圧迫して止血することができます。まず直接圧迫止血を行い、さらに医師の診療を受けるようにします。

間接圧迫止血
 耳の前での止血

一方の手で頭を反対側から支えながら、耳のすぐ前で脈が触れる部位に他方の手のおや指を当て圧迫します。


 わきの下での止血

わきの下のくぼみから、おや指で上腕骨に向けて圧迫します。



 そけい部での止血

そけい部(股の付け根)に手のひらをあて、肘を伸ばして体重をかけて圧迫します。

鼻出血
鼻出血の大部分は、鼻の入口に近い鼻中隔粘膜の細い血管が、外傷(ひっかくことやぶつかることなど)や血圧、気圧の変化などで腫れて出血します。
手当
・座って軽く下を向き、鼻を強くつまみます。これで大部分は止まります。
・額から鼻の部分を冷やし、ネクタイなどはゆるめ、静かに座らせておきます。
・ガーゼを切って軽く鼻孔に詰め、鼻を強くつまみます。
・出血が止まっても、すぐに鼻をかんではいけません。
・このような手当で止まらない場合は、もっと深い部分からの出血を考えて、医師の診療を受けさせます。
※ 鼻出血の場合、頭を後ろにそらせると、温かい血液が喉に回り、苦しくなったり、飲み込んで気分を悪くすることがあるので、上を向かせないようにします。
※ 頭を打って鼻出血のある場合は、止めようとむやみに時間をかけるのではなく、手当とあわせて直ちに119番通報します。

応急手当(外傷) 脱臼・肉離れアキレス腱断裂

脱臼
脱臼は関節が外れたものです。関節周囲の靱帯、筋、腱、血管の損傷を伴うことがよくあります。特に肩、肘、指に起こりやすく、適切な治療をしないと関節が動かなくなったり、脱臼が習慣になったりする恐れがあります。
症状
・ 関節が変形し、腫れて痛む。
・ 脱臼したままの関節は、自分では動かせない。
手当
・ 患部をできるだけ楽にし、上肢ならば三角巾を利用して固定します。
・ できるだけ早く医師の診療を受けさせます。
※ 脱臼をはめようとしたり、関節の変形を直そうとしてはいけません。関節周囲の血管や神経などをいためる危険性があります。
※ 肘内障こどもに多くみられる肘関節の亜脱臼で、真の脱臼ではなく、手を強く引っ張ったときに起きます。肘の痛みのため、上腕をだらっと下げ動かさなくなります。すぐに医師の診療を受けさせます。

肉離れ
背筋の肉離れは、不自然なかっこうで重い物を持ち上げたときなどに起こります。大腿、下腿などの肉離れは、スポーツ外傷に多く、あまり運動をしない人が急に運動したり、筋肉に力が入って収縮しているところを強く打ったりした場合などに起こります。
手当
・ 冷やして安静にします。
・ 背筋の場合は、マットレスの下に板を入れます。
・ 激しい痛みがあるときは、医師の診療を受けさせます。

アキレス腱の断裂
アキレス腱の断裂は、スポーツ中などに急に起こり、直ちに運動不能になり、つま先で立てず、アキレス腱の部分を押さえると痛みを訴えます。また、断裂した部分の皮膚表面がへこんでいるのが見てわかります。
手当
・ 歩かせてはいけません。
・ 下向きに寝かせて、副子のうえに固定します。上向きのときにも、つま先を伸ばした状態のまま医療機関に搬送します。

応急手当(外傷) 骨折

骨折には、いろいろな分類がありますが、非開放骨折と開放骨折とがあり、骨が完全に折れている完全骨折と、ひびが入っている程度の不完全骨折とに分けることもできます。少しでも骨折が疑われるときは骨折の手当を行います。 


非開放骨折
骨折部の皮膚にきずがない、あるいは骨折部が体の表面のきずと直接つながっていない状態の骨折です。
手当
・全身及び患部を安静にします。
・患部を固定します。(骨折した手足の末梢を観察できるように、手袋や靴、靴下などを予め脱がせておきます。)
・骨折部が屈曲している場合、無理に正常位に戻そうとすると、鋭利な骨折端が神経、血管などをきずつける恐れがあるので、そのままの状態で固定します。
・固定後は、傷病者の最も楽な体位にします。腫れを防ぐために、できれば患部を高くします。
・体身を毛布などで包み、保温します。


開放骨折
骨折部が体の表面のきずと直接つながっています。外からのきずだけでなく、折れた骨の鋭い骨折端が内部から皮膚を破って外に出ていることがあります。また、誤った手当や搬送によって、二次的に起こることもあります。開放骨折は、「神経・血管・筋肉などの損傷がひどい」「出血が多量」「骨折部が汚れやすく感染の危険が高い」などの危険性があり、これらは骨折の治癒を長引かせ、化膿したり関節が動きにくくなったりするほか、上肢・下肢の切断を余儀なくされることもあります。
手当
・非開放骨折の手当と同じですが、特に次のことに注意します。
・出血を止め、きずの手当をしてから固定します。
・骨折端を元に戻そうとしてはいけません。
・患部を締めつけそうな衣類は脱がせるか、きずの部分まで切り広げます。

応急手当(外傷) 蜂に刺された

蜂に刺された

ハチ(スズメバチ、アシナガバチ)
ハチに刺されると痛みと腫れが起こり、ハチ毒に過敏な人は、一匹に刺されてもショック状態になったり、呼吸停止を起こし死亡することがあります。
手当
・針が残っているものは、根元から毛抜きで抜くか、横に払って落とす(針をつまむと、針の中の毒をさらに注入することがある)。
・冷湿布をして医師の診療を受けさせる。

応急手当(外傷) 動物にかまれた

動物にかまれた


動物の歯は不潔なので、特殊な病気ばかりでなく、一般の感染にも注意する必要があります。


<<咬創(動物にかまれたきず)の一般的手当>>


・どんなに小さなきずでも、石けんを使って水でよく洗います。きずの回りも唾液がついているところはよく洗い流します。
・清潔なガーゼを当てて包帯をします。
・動物などによる咬創は化膿しやすく、動物が病気に感染していることもあるので、必ず医師の診療を受けさせます。


イヌ
するどい歯でかまれると、深いきずやさききず(裂創)ができ、こどもがかみ殺された例もあります。イヌにかまれると、すぐ狂犬病を心配しますが、現在、我が国では狂犬病の発生はありません。しかし、狂犬病流行国を旅行中に感染したり、流行国から短時間で航空機によって運ばれたペットから感染する危険はあります。狂犬病ウイルスは、必ずしもイヌばかりでなく、ネコ、キツネ、オオカミ、スカンクなどによっても感染します。

手当
・感染の危険があるので、速やかに医師の診療を受けさせます。
・飼い主のわからないイヌのときには、イヌの特徴などを保健所に届けて、捕獲してもらいます(2週間イヌを隔離して観察します。狂犬ならば発病して必ず死にます)。
※狂犬病流行国でかまれた事実があれば、帰国後速やかに医療機関でワクチン接種を受ける必要があります。



ネコ
ネコにひっかかれたり、かまれたりした数日から数週間後に、きず口の周囲に赤紫色の隆起、リンパ節の痛みや腫れ、発熱がみられることがあります。これは、猫ひっかき病といって、特定の細菌がネコノミからネコ、人に感染する人畜共通感染症で、夏から初冬に多く発生します。

手当
・リンパ節の腫大や発熱は、他の病気でもみられる症状ですが、発熱が続くようなら、必ず医師の診療を受けさせます。


ネズミ

単にかまれたきずの化膿だけでなく、スピロヘータが原因で、きずがいったん治った後、また腫れたり熱が出たりすることもあります。

手当
・きずは清潔にします。
・どんな小さなきずでも、感染の危険があるので、必ず医師の診療を受けさせます。


ヘビ

普段から、無毒と有毒ヘビの見分け方を知っておくとよいのですが、とっさの場合、区別がつかないことが多いです。日本での毒ヘビは、マムシ(日本全土)、ハブ(沖縄、奄美大島)、ヤマカガシ(本州、四国、九州など)です。いずれも、かまれると10分前後できず口が腫れてきます。痛みが起こり、適切な応急手当をしないと全身状態が悪くなり死亡する危険があります。ヤマカガシにかまれたときは、数時間くらい後で突然きず口から出血し、目、皮膚や粘膜からも出血するのが特徴です。毒液が直接目に入ると失明することがあります。

手当

・安静にします。手足を曲げ伸ばしたり走ったりしないようにします。
・ヤマカガシなどの毒液が目に入ったときには、すぐに水でよく洗い流します。
・ヘビの毒素により脱水症状を起こしやすいので、水分を与えます。
・急いで医療機関に搬送します。(毒ヘビの場合、血清の投与など適切な治療をしないと、死亡する危険があります。)
・かまれたきず口に口をつけて吸い出すことは、してはいけません。

一時救命処置 その4 気道異物除去

気道異物除去


のどに異物が詰まると、話しかけても返答ができないとか、のどをつかむような仕草をして、苦しい状態を示そうとします。傷病者が咳をすることが可能であれば、咳がもっとも効果的です。





<<上腹部を突き上げる>>

<立っているか座っている場合>
傷病者を後ろから抱くような形で、上腹部(へそのすぐ上、みぞおちより下方の位置)に握りこぶしを当て、もう一方の手でその握りこぶしを上から握り、手前上方に突き上げます。

※この方法は、乳児や妊婦には絶対に行ってはいけません。また、握りこぶしが剣状突起に当たるときも行ってはいけません。なお、行った場合は内臓を損傷している可能性があるので、窒息の状態がおさまっても必ず医師の診療を受けさせましょう。



<<背中をたたく>>
<立っているか座っている場合>
傷病者の頭をできるだけ低くし、胸を一方の手で支え、他方の手で左右の肩甲骨の間を続けてたたきます。



<寝ている場合>
傷病者を横向きにし、胸と上腹部を救助者の大腿部で支え、左右の肩甲骨の間を続けてたたきます。

<<子どもの場合>>
基本的には成人の場合と同じ要領で行いますが、いずれも力を加減して行うことが大切です。

<乳児の場合>
救助者は、自分の手で乳児のあごを支え、前腕にのせて頭の方を下げ、もう一方の手の手掌基部で背中の真ん中をたたきます。

<小児の場合>
素早く抱きかかえる又は大腿部で支え、頭を低くして平手(手掌基部)
で背中をたたく。
もしくは、成人と同じ要領で上腹部を突き上げる。
これらの方法を行っている間に傷病者が意識を失ったときは、直ちに心肺蘇生法を行います。


一時救命処置 その3 AEDを用いた除細動


AED(自動体外式除細動器)を用いた除細動

国内で非常に多い心臓突然死、その中で特に多いのが心室細動(心臓の痙攣)によるもので、発生した場合は早期の除細動(痙攣を止めること)が救命の鍵となります。
AEDは、電源を入れ、音声メッセージに従って操作し、コンピュータ作動によって自動的に心電図を判読して、必要な場合のみ、電気ショックによる除細動を指示する簡単で確実に操作できる機器です。

1.電源を入れる  



 





2.電極パッドを傷病者の胸部に貼る(ケーブルを本体に接続する)  




 







3.AEDが自動的に傷病者の心電図を解析する  

4.AEDから除細動の指示が出たら、除細動ボタンを押す  

一次救命処置 その2 心肺蘇生法

<<意識の確認>>
声をかけ、肩を軽くたたき、意識の有無を確認します。反応がなかったり鈍い場合は、まず協力者を求め、119番通報とAEDの手配を依頼して、気道確保を行います。
<<気道確保(頭部後屈あご先挙上)>>
一方の手を傷病者の額に、他方の手の人差し指と中指を下あごの先に当て、下あごを引き上げるようにして、頭部を後方に傾けます。
 
<<呼吸の確認(見る、聴く、感じる)>>

1.気道を確保したまま顔を傷病者の胸の方へ向け、耳を傷病者の口元に近づける。


2.胸のあたりが上下に動いているか見たり、呼吸音が聴こえるか、物が詰まったような呼吸音ではないか、吐く息を頬で感じるかを5~10秒以内で確かめる。

<<人工呼吸>>
普段どおりの息(正常な呼吸)がないときは、人工呼吸を行います。
1.救助者は、気道を確保したまま、額に置いた手の親指と人差し指で傷病者の鼻をつまむ。
2.救助者は自分の口を大きく開けて、傷病者の口を覆う。
3.1秒かけて傷病者の胸が上がるのがわかる程度の吹き込みを行う。これを2回続けて行う。(1回吹き込んだらいったん口を離し換気させる)
4.人工呼吸を行って呼吸の回復を示す変化がない限りは、直ちに次の心臓マッサージ(胸骨圧迫)に移る。

<<胸骨圧迫>>
心臓の拍動が停止したり、心臓の機能が著しく低下して血液を送り出せない場合に、心臓のポンプ機能を代行するために行います。

1.傷病者を固い床面に上向きで寝かせる。

2.救助者は傷病者の片側、胸のあたりに両膝をつき、傷病者の胸骨の下半分(胸の真ん中)に片方の手の手掌基部を置き、その上にもう一方の手を重ねる。

3.両肘を伸ばし、脊柱に向かって垂直に体重をかけて、胸骨を4~5cm(成人の場合)押し下げる。

4.手を胸骨から離さずに、速やかに力を緩めて元の高さに戻す。

5.胸骨圧迫は毎分約100回のテンポで30回続けて行う。

<<胸骨圧迫と人工呼吸>>
心肺蘇生法を効果的に行うために胸骨圧迫と人工呼吸を組合せて行います。 胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を繰り返します。AEDを使用するとき以外は、心肺蘇生法(特に胸骨圧迫)を中断なく続けることが大切です。人工呼吸が行えないときは、胸骨圧迫だけでも行いましょう。

<<こどもに対する心肺蘇生法>>
こどもに対する心肺蘇生法は、基本的には成人と同じですが、年齢による生理的な違いや体格の違いから、多少手技の違いがあります。

●注意事項
・気道確保こどもの首は柔らかいので、後方に傾け過ぎないようにします。
・人工呼吸肺容量が少ないので、胸を見て、吹き込み過ぎないようにします。
・胸骨圧迫乳児は、2本の指で胸の厚さの1/3くぼむ程度、幼児は、片手または両手で胸の厚さの1/3くぼむ程度、押し下げます。圧迫のテンポは成人と同じです。


一時救命処置 その1 手順


※小児・乳児では協力者がない場合、まず2分間程度の心肺蘇生法を行い、
その後に119番通報とAEDを準備します。
※乳児にはAEDは使用しません。

救助者の心得

<<救済者が守るべき事>>
救助者は、救助に際して次のことを自覚する必要があります。
・ 救助者自身の安全を確保する。周囲の状況を観察し、二次事故(災害)の防止に努める。
・ 原則として医薬品を使用しない。
・ あくまでも医師などに引き継ぐまでの救命手当・応急手当にとどめる。
・ 必ず医師の診療を受けることをすすめる。
・ 死亡の診断は医師がその資格において行う。

よりよい協力者を、、、
 手当の全部を1人で完全に行うことはむずかしい。傷病者に対してよりよい手当を行うと同時に、周囲の状況に対処するため、よい協力者が必要です。
 傷病者の救出、救命手当や応急手当、119番通報、資材の確保、搬送、群衆整理など協力を必要とすることが多くあります。

<<状況の観察>>
周囲の状況の観察
 倒れている人(傷病者)を発見したら、まず周囲の状況をよく観察します。 事故発生時の状況、事故の位置、二次事故(災害)の危険性、傷病の原因、 証拠物などについて注意する必要があります。 とくに、周囲の状況が悪いときには、傷病者および救助者自身の安全を確保し、 しかも十分な手当を行う為、安全な場所への避難を優先させる事もあります (例えば夜間の事故、交通事故、感電事故、崩壊した建物のそば、土砂くずれ、有毒ガスのあるところなど)。 また、二次事故(災害)の危険性があり傷病者に近づけないときは、無理せず、直ちに119番に通報します。

傷病者の観察
 手当を行う前には、傷病者の状態をよく調べなければなりません。よく見て、話しかけ、直接触れて生命の徴候(意識、呼吸、脈拍、顔色・皮膚の状態、手足の動き)を観察します。 どんな場合でも、全身を観察する事が大切です。
 特に、心肺蘇生法が必要な意識障害、呼吸停止、心停止の 判断を下すために、 ・意識はあるか ・呼吸をしているか などを、よく調べます。

<<傷病者の安静>>
安静
 手当をするときはもちろん、搬送する場合にも傷病者の安静を確保することが大切です。体位、保温、環境の整備などを考えましょう。

体位
 原則として水平に寝かせます。  
 





・意識がある場合
 本人に聞いて最も楽な体位にします。顔色が青い時は足の方を、赤い時には上半身を少し高くします。腹痛のひどいときには腹筋の緊張を緩める体位をとらせます。
 


・意識がない場合
仰向けでは、のどに舌が落ち込んだり、嘔吐物がつまる可能性があるので、気道確保の保てる体位(回復体位)にします。
 




[回復体位]
下あごを前に出し、両肘を曲げ上側の膝を約90度曲げ、傷病者が後ろに倒れないようにします。この体位で舌根沈下や吐物による窒息を防ぐことができます。



 ・仰臥位からの体位の変換
1.救助者側にある手を横に出しておきます。


2.肩と腰に手を当て静かに横向きに引き起こし、大腿部で傷病者の体を支えながら気道確保をします。


3.傷病者の膝を引き寄せ姿勢を整えます。



保温
本人の体温を保つようにし、全身を毛布で包みます。ネクタイ、ベルトなど衣類をゆるめて呼吸を楽にさせますが、必要以上に衣類を脱がせてはなりません。周囲の温度や傷病者の状態を考えて保温します。濡れた衣類は取りかえるようにしますが、着替えるものがなければ衣類の上から保温します。
傷病者を直接地面や床の上に寝かせる場合、下からの冷えに対する配慮が必要です。新聞紙などを敷くだけでも断熱の効果があります。毛布で傷病者を保温するときには、傷病者を大きく揺らさないように注意します。





1.毛布をあらかじめ半分まで折り込んでおき、傷病者の片側に置きます。






2.傷病者を引き起こし、毛布を差し入れます。








3.毛布を引き出し、傷病者を包みます。肩や足を十分に包みます。


環境の整備
寝かせた場所の環境が悪ければ、安静は妨げられます。
身体的かつ精神的な安静をはかることが大切です。そのためにも周囲の者はいたずらに騒ぎ立てないようにしましょう。また、できるだけ傷病者にきずや血液や吐物を見せないようにし、気持ちを動揺させないようにします。救助者のしっかりした態度や言葉遣いが、傷病者を力づける大きな助けになることを心得ておきましょう。